空飛ぶクルマ×2024年サービス開始 有力メーカーが絞られた…日本政策投資銀行 岩本学氏[インタビュー]

空飛ぶクルマ×2024年サービス開始 有力メーカーが絞られた…日本政策投資銀行 岩本学氏[インタビュー]
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来たる1月26日、オンラインセミナー「空飛ぶクルマ×2024年~サービス開始に向けた最前線とビジネスチャンス~」が開催される。セミナーに登壇するのは、株式会社日本政策投資銀行 産業調査部 兼 航空宇宙室 調査役の岩本学氏。

今回のセミナーは以下のテーマで進められる。

1.空飛ぶクルマの機体開発とサプライチェーン構築を巡る最新動向
2.空飛ぶクルマ業界にとっての2024年
3.社会実装に向けた日本の自治体や企業の取組みについて
4.質疑応答

セミナーに先立ち、見どころを岩本氏に聞いた。

■ヘリコプターと何が違うのか

今回のセミナーのテーマである“空飛ぶクルマ”は、具体的にはeVTOL=電動垂直離着陸機を指す言葉である。“電動ヘリコプター”と表現するとイメージしやすいだろう。

では、ヘリコプターが電動になることでどのようなメリットがあるのか。岩本氏は、従来のヘリコプターと比べて騒音がかなり低くなることを挙げる。

「機体のタイプによってばらつきはありますが、例えばトヨタ自動車が出資しているアメリカのジョビー・アビエーション(Joby Aviation)の機体は、地上から約500メートル上空を飛行するときの音の大きさは約45デシベルと言われています。」

「45デシベルというのは、図書館や、深夜の街中ぐらいの音のレベルなので、日中飛んでいてもほとんど気づかないくらいの音の大きさです。」

「垂直に着陸する際でも65デシベル程度とのことです。65デシベルだとファミレスの会話くらいの音なので、日常生活の中でそんなに気になるレベルではないと思います。もちろんたくさんの機体が飛ぶとどうなのか、ということはありますが、一機飛んでいるくらいなら、あまり気にならないでしょう。」

また岩本氏は、従来のヘリコプターと比較してコストが大きく下がる可能性を指摘する。

「従来のヘリコプターは機構が複雑なので、機体の値段がそもそも高いですし、メンテナンスのコストも高くなってしまうところがあります。」

「それが電動化されるとどうなるか、ラジコンヘリとドローンを比べてみればわかると思いますが、機構のシンプルさは一目瞭然ですし、ドローンはメンテナンスもしやすく、手軽に飛ばしやすいというメリットもあります。」

■有力なメーカーが絞られてきた

空飛ぶクルマの開発は、ベンチャー企業を中心に世界中で多くのメーカーが進めているが、それに加えて大手の航空機・ヘリメーカーや自動車メーカーも参入し、10~15社ほどに絞られてきたという。

「空飛ぶクルマの開発は、もともとベンチャー企業がリードしてきましたが、その後エアバスやボーイング、エンブラエルなどの大手航空機・ヘリメーカー、またホンダやヒョンデなどの自動車メーカーも参入して機体の開発にしのぎを削っているというのが今の状況です。」

「資金調達の水準から見ても、有望な機体メーカーは世界的に10から15社ほどに絞られてきたように思われます。」

2024年に開催されるパリ五輪は、開発した機体を空に飛ばすひとつの大きなイベントと見られているが、実際に乗客を乗せて空を飛ぶためには、各国の航空当局の認証を取る必要がある。

「主要各社は、機体の設計が安全性基準に適合していることを航空当局が認証する形式証明取得に向けて、機体開発を進めているところです。」

「特にパリ五輪での飛行が期待されるボロコプター(Volocopter)は、2024年中に形式証明を取ると言っていますし、そのほかにもジョビー・アビエーションや、ユナイテッド航空が出資しているアーチャー(Archer)が、2024年中の末ごろになると思いますが、それまでに型式認証を取得して、2025年早々にもアメリカでなんらかの形でサービスを開始すると言っています。そういう意味では2024年は空飛ぶクルマの今後を占う重要な年になると思います。」

「いっぽう中国のメーカーであるイーハン(EHang)は、2023年の10月にすでに形式証明を中国当局から取得しました。これによって中国国内では商業運航が可能になるため、中国は他国に先駆けてそこまで到達したということになります。」


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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