ジュネーブ・モーターショーで国際披露される新型『M3』はよりいっそう熟成の度合いを増し、4世代にわたるM3の歴史の中で、最強かつもっとも個性的なクルマになった。BMWのMディビジョンが開発した“ジュニア・スーパーカー”の詳細を本誌特派員グレッグ・ケーブルが報告する。
まずはじめに断わっておくが、新型M3はそのふくらんだボンネットの下にV8エンジンを搭載していない。なぜなら、M3の開発は34カ月前に始まっているが、栄光の直6エンジンは1991年に3.0リットル仕様が登場以来、ドライバーの血中アドレナリン濃度を高めるのに不可欠な存在になっているからだ。
BMWがM3のために、レース・シーンから血筋を受け継いだエンジンをあきらめたということではない。「もちろん『M5』と同じV8も検討した。プロトタイプも作っている」とBMW Mのヘッド、アドルフ・プロメスバーガーは証言する。
「しかし結局のところ我々は直6にこだわった。最も安価な選択というのではないが最も妥当な選択だ」 その通り、正しい決断だ。95年前後には高回転6気筒エンジンは熟成のピークに到達したと評価されるが、BMWはさらにパフォーマンスの強化に努めた。
新型M3の出力増強はわずかだ。加速もまたしかり。公式発表では、0-60マイル/h(96km/h)加速において新型M3はM5よりも速い。0.1秒だけ。しかしこの意味は大きい。この結果、新型M3は史上最速のMカーとなったのだ。
1986年デビューの195PS M3以来、このシリーズの4代目となる新型は現行3シリーズをベースにする。スピード、敏捷性、レスポンスを得るため、すべての部品がレーシングカーのようにチューンされている。スペックを見る限りは、もうすでにレーシングカーだ……。