EVトランスフォーメーションで生まれる9つの事業領域とは…リブ・コンサルティング ディレクター 西口恒一郎[インタビュー]

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昨今、モビリティ領域とエネルギー領域がEVをハブとして混ざり合い、新たな市場が広がりつつある。このEVトランスフォーメーション(EVX)におけるあらたな事業領域とは。事業開発はどのように進めるべきなのか。リブ・コンサルティング モビリティインダストリーグループ ディレクターの西口恒一郎氏に話を聞いた。

西口氏は、4月19日開催の無料オンラインセミナー 「GX/EVXメガトレンドと自動運転L4実装に向けて」に登壇し、このテーマについて詳説する予定だ。

EVXにおける9つの事業ドメイン

---:まず、今回のテーマであるEVX(EVトランスフォーメーション)の現在の状況について教えてください。

西口:日本においては、経産省を中心に2050年のカーボンニュートラルを掲げ、グリーン成長戦略が14の重点分野で策定されました。中でも「自動車・蓄電池産業」の領域がいわゆる一丁目一番地となるでしょう。運輸部門の二酸化炭素の排出量の割合が2割弱であり、自動車の製造などを含めると、CO2の削減効果が最も高いのが自動車・蓄電池産業です。

このような状況で、モビリティ領域のプレイヤーが新しくエネルギービジネスを始める事例があり、逆にエネルギー領域のプレイヤーが新しくモビリティ関連事業を始めるということも起こってきます。相互の乗り入れが起きている市場の中で新しいサービスや新しいプロダクトが生まれてきている。この事態を我々は「EVトランスフォーメーション(EVX)」と表現して発信活動をしています。

EVトランスフォーメーションで生まれる9つの事業領域とは…リブ・コンサルティング ディレクター 西口恒一郎[インタビュー]EVトランスフォーメーションで生まれる9つの事業領域とは…リブ・コンサルティング ディレクター 西口恒一郎[インタビュー]

EVXにおいては現在、大きく9つの事業ドメインがあると我々は認識しています。このなかで各種プレイヤーが新しい実証の取り組みを開始したり、新しいサービスをローンチする事例が昨年から加速しています。これらの領域において国内のモビリティとエネルギーの市場環境をアップデートしていくためのサポートを我々はさせていただいております。

EVトランスフォーメーションで生まれる9つの事業領域とは…リブ・コンサルティング ディレクター 西口恒一郎[インタビュー]EVトランスフォーメーションで生まれる9つの事業領域とは…リブ・コンサルティング ディレクター 西口恒一郎[インタビュー]

事業を考える際の3つの視点

---:これらの事業ドメインから、自社の強みを活かせる新規事業領域を考えればいいということでしょうか。

西口:新しい事業を考えるために、3つの視点を意識して事業開発を進めていくことが大切です。

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一つ目はパーパスの視点です。これまでは「ビジネスandサステナビリティ」でした。SDGsの観点からサステナビリティの領域は企業においても大事なポイントではありましたが、これまではビジネスとサステナビリティは「and」でつながれていました。つまり、それぞれに目標設定を立てて企業活動をしていたのです。

しかし現在は「ビジネスwithサステナビリティ」でふたつの要素をかけ合わせる。ビジネスを通じてどのような社会や世界を実現したいのか、そのようにパーパスを立てて活動する必要があります。

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昨年くらいからですが、実際にベンチャーやスタートアップの界隈では「ジョイントビジョン」という表現が一部で出てきています。いくつかの企業が連携をしながら新しいビジネスを生み出していく、あるいは新しいエコシステムを構築していくということが、国内だけではなく世界的な潮流になっています。ステークホルダーの全員が「このような世界観を実現したい」と錦の御旗を掲げることによって、これまでとは異なる業種のプレイヤーを新しく仲間に迎え入れる。自分たちだけでは足りないアセットを補充していく。そのような仲間探し、仲間作りにもつながります。

二つ目は事業ドメインの視点です。既存事業をどのように拡大解釈していくか、事業ドメインの観点で大きく3つの切り口があります。

1:「自社領域の振興」 自社が既に参画している領域を深く耕していく。
2:「自社アセットの横展開」 自分たちの業界から外の業界にピポットする。
3:「バリューチェーンの染み出し」 自分たちのバリューチェーンの領域から、川上あるいは川下へ行く。そして新しい事業のドメインを探す。

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そして三つ目はビジネスモデルの視点です。これは一般的なビジネスモデルキャンバスです。事業ドメインを元に具体的なビジネスモデルを描き、作ったものをブラッシュアップしながら事業検証を進めていきます。「リターン」「リスク」「インパクト」の大項目の中で、全てに○以上の評価がつくものはGo、いくつか×がつくとNo-Goというように、明確なGo/ No-Goの判断基準を事前に設計した上で事業検証を行います。

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具体的な事業開発ステップには、ステップ0からステップ5までの6つがあります。基本的にはこの型に沿って事業開発を進めていく必要があります。このステップの中でよくご相談をいただくのは「実際にビジネスのアイディアをどう見つけていけばよいのか」というステップ1の点です。

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新規事業開発は誰も思いつかなかった新規事業のアイディアを天才がパッと発想し、それをベースに組み立てていく、ということが一般的には言われるのですが、我々が行っている事業開発や、世の中で成功しているモデルに共通する新規事業の見つけ方はアプローチの仕方が全く違います。世の中で解決されていない社会課題を発見するのがファーストステップです。新規事業のアイディアを自分しか思いついていないことは基本的にありません。明確な市場機会があるのであれば、すでに事業実装されているはずなのです。

自社が向き合うべき課題領域はどこか。どのような課題を自社は解決すべきか。そのような点を明確にした上で、その課題はなぜ解決されていないのか。市場ボリュームが小さいからなのか、規制のためなのか。あるいは技術的な問題や資金面の問題があるのか。そのように思考し、事業として成立しない理由を見つけていくのです。

その課題の解決が既存の事業として成立していない理由を明確に理解したならば、いったいどうすればそれを解決することができるのか、事業の成立要件をしっかり整理した上で進めていきます。このようにステップを踏んで進むのが実は最短ルートなのです。

エネルギー企業がモビリティを手掛ける理由

---:EVXのなかでも、エネルギー企業がモビリティ関連事業を手掛ける事例にはどのようなものがあるでしょうか。

西口氏:各社とも非常に積極的に取り組まれていますが、直近では九州電力が「weev」というマンション向けのクローズ型のEVカーシェアサービスを始めたり、中国電力が完全自立型EVシェアリングステーションの実証事業を開始した事例を注目しています。そのほかエネルギー企業がEVを作るケースもあります。例えば出光タジマEVの事例ですね。日本のこのような流れは直近一年ぐらいの動きですが、海外の動きはもっと進んでいます。

日本よりもカーボンニュートラル化が早いのは海外ですので、海外の大手の電力会社がモビリティ関連の企業に大きな出資をして、自分たちの新しい事業としてモビリティサービスを組み込んでいく動きは日本よりも先行しています。その流れが去年くらいから国内でも加速しています。

---:エネルギー企業がモビリティ事業に参入するのは、どのような動機からなのでしょうか。

西口氏:2つの重要な点があります。ひとつ目は、EVが普及して自動車のエネルギー源がガソリンから電気に変わると、自分たちの既存事業とのシナジー効果が高いという点。
また、自動車の所有から利用への流れが進む事により、例えば自動車の月額使用料と電気の月額使用料をひとつのパッケージにして、サブスクリプションで提供するというモデルも将来的には広がると考えます。

ふたつ目としましては、そもそも人口や世帯数の減少により既存事業はシュリンクしていく事が確定しているため、これから企業として成長していくためには新しい事業をどんどん取り込んでいかなければなりません。電力系やガス系の会社の既存事業と親和性が高い事業ドメインはどこかと考えますと、やはりEVに関わる事業です。今後間違いなく伸びると市場と捉え、各社が投資を進めています。

---:サブスクリプションで電気代とEV使用料を一緒にして、料金をパッケージで割安にできる、ということでしょうか。

西口氏:おっしゃる通りです。基本的にはEVとセットで売ることで電気料金を下げるモデルはあると思います。国内でも既に、ある日産系の自動車販売店での取り組みがあります。日産の自動車販売店でEVを買った場合、その自動車販売店専門の電力プランを利用できるというものです。

そもそもEVを購入して自宅で充電する場合には、EV充電に合わせたプランに切り替えないと、電気コストが高くなるケースが多く、「うちで買っていただければ、特別な電力プランを使うことができますよ」というのは、消費者を囲いこんでいくひとつの手法になります。

---:消費者としては、その自動車販売店でEVを買うと同時に、EVに適した電力プランに入ることができて得をする、ということですね。

西口氏:そのほかにも、トヨタ「bZ4X」というEV販売に関連して、トヨタ系のいくつかの販売店では、地域の電力会社と組んで、その販売店独自の電力パッケージを作り、bZ4Xとセットで提供する、というビジネスモデルを検討しています。

VPPとしてのEV活用ビジネス

---: VPP(バーチャルパワープラント)としてEVを利用するビジネスが欧州で始まっていますが、日本ではどうでしょうか。

西口氏:日本においては、ルールチェンジに伴いこれから市場が広がる領域との認識です。特に、VPPは再生可能エネルギーの普及・拡大に貢献できる仕組みのため、日本での再エネ比率の向上に伴い市場はますます広がっていくでしょう。ヨーロッパではすでにVPPの事業者が発足しており、ドイツの大手VPP事業者が国内の電力会社と協定を締結するなどの市場が大きく広がっています。VPPは再生可能エネルギーの利用を促進する仕組みとして、世界で注目されているのです。

---:もうひとつお伺いします。EVXの事業ドメインにあるEMSとは、具体的にはどのような事業なのですか。

西口氏:大枠で言えば電力の可視化・最適化です。例えば、工場をイメージしていただけるとわかりやすいと思います。電力は使用する時間帯や発電量によって料金が大きく変動してしまいます。もっとも安い時に買って電力を使うのが最も効率的で生産性が上がる。工場全体でどのくらいの電気が使用されているかは当然把握できます。しかし工場の中のどの機械や設備でどのくらいの電気が使用されているかとなると、まだまだ可視化できていません。

ですので、これを将来的にどこまで細分化した上で最適化できるか。また、今後のカーボンニュートラルの潮流の中で、どこから電気を購入するのか、どのような電気を使うのか、という点も問われてきますので、EMSの市場はまだまだ伸びるだろうと思います。

今回のセミナーではEVXのトレンドをお伝えするとともに、今後の事業開発におけるポイントについてお伝えが出来ればと思います。

西口氏が登壇する無料のオンラインセミナー 「GX/EVXメガトレンドと自動運転L4実装に向けて」は、4月18日(月)正午申込締切。
《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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