【マツダ CX-90】デザイナーが語った「4つのメッセージ」とは

CX-90のデザイン開発を率いた椿貴紀チーフデザイナー。
  • CX-90のデザイン開発を率いた椿貴紀チーフデザイナー。
  • マツダ CX-90
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  • 今回発表されたインテリアは、CX-60の「プレミアムモダン」に相当するグレード。
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マツダが米国で初公開した『CX-90』。発表イベントにはチーフデザイナーの椿 貴紀氏が登場し、CX-90に込めた想いを語った。

椿氏は現行『CX-5』のエクステリアリーダーを務め、欧州スタジオに赴任して『CX-60』の初期開発に参画した後、チーフデザイナーに昇格。CX-90の内外装全体を取りまとめた。

◆存在感あるプロポーション

マツダ CX-90マツダ CX-90

「CX-90のデザインはパワフルなパフォーマンスに相応しいダイナミックなフォルムに、品格ある美しさを組み合わせている。エクステリアの伸びやかなプロポーションが動的な感覚をもたらし、インテリアはダッシュボードから3列目席まで洗練されたスタイルにした」

冒頭に基本的な意図をこう語った椿チーフは、続いてデザインに込めたメッセージを4つに分けて説明した。

「最初に、存在感あるプロポーション。CX-90のダイナミックなプロファイルが、パワフルなアピアランスを生み出す。これはプレミアムセグメントにアピールするものです」

マツダ CX-90マツダ CX-90

「新しいラージ・プラットフォームにより、美しいスタイリングとスペーシャスなインテリアを併せ持つクルマをデザインできた。視覚的な重心を後ろに寄せたキャビンは、魂動デザインにとって理想的な後輪駆動らしいプロポーションを表現している」

寸法諸元はまだ未発表だが、3列シートを実現するためCX-60に対してホイールベースとリヤオーバーハングを延長。そのぶんより伸びやかに見えるし、なるほど存在感がありそう。キャビンの重心を後ろに寄せる狙いはCX-60も同じだが、Bピラー以降のキャビンが長くなり、さらにベルトラインを後端まで真っ直ぐに延ばしたことで、キャビンの重さを後輪にかけるという後輪駆動らしさはCX-60より明快になった。

◆光が移ろうエモーション

マツダ CX-90マツダ CX-90

2つ目のメッセージは、「見る人のエモーションを呼び起こすエクステリア」である。「ボディ面の映り込みに沿って光が動く。それを強調するプロファイルにしている。キャビンとボディは一本の筋(ショルダー断面)によって結ばれ、カタマリ感を醸し出す」

「ボディ面は光の動きによって絶えず変化して見えるように、緻密に造形した。ドア下端のクローム・ガーニッシュはCX-90のエレガントさを強調。それらのデザイン要素をしっかりと地面に支えるのが、切削とブラックメタリック塗装の新しい21インチホイールです」

全幅もCX-60よりワイド。室内幅やドアウインドウの位置は変わりないので、フェンダーやドア断面の厚みが増したわけだ。それを活かして、ボディサイドは表情豊かで力強い。フェンダー・フレアの張り出し量がCX-60よりずっと大きくなり、ドアからフェンダーへの光の動きがさらに強まっている。

◆アーティザンレッドの高級感

マツダ CX-90マツダ CX-90

3つ目に挙げたのは、昨年12月に『マツダ6』の特別仕様車に設定したアーティザンレッド。当時からマツダはこれを、北米ではCX-90に採用すると明らかにしていた。

「最新の『匠塗り』であるアーティザンレッドを導入できて嬉しい」と椿チーフ。「この深みがあって鮮やかな色は、ラグジャリー感を強調するために新開発された。その一方で環境フレンドリーでもある」

「アーチザンレッドは我々のブランドカラー(=匠塗り)で培った技術を組み合わせている。影面ではほぼブラックに見えるけれど、光が当たると明るくビビッドなレッドが現れる」

環境フレンドリーというのは、CX-60やCX-90が生産される防府第2工場の塗装ラインの特徴だ。水性塗料を使うだけでなく、中塗りを廃止。普通なら中塗りの後にある焼き付け工程も廃止し、3層を塗り重ねた最後に1回だけ焼き付けを行うことでC02排出を低減させている。アーチザンレッドのデザインや技術内容については、筆者が書いた別記事を参照いただきたい。

◆インテリアは「プレミアムモダン」

今回発表されたインテリアは、CX-60の「プレミアムモダン」に相当するグレード。今回発表されたインテリアは、CX-60の「プレミアムモダン」に相当するグレード。

「最後にインテリア。存在感あるプロポーションのおかげで、現行『CX-9』(編集部注:北米専用の3列シートSUV)からキャビンスペースを拡大できた。そこに乗る誰もが快適でリラックスできるデザインだ。ダッシュボードはとても開放感があり、ワイドなセンターコンソールは縦置きエンジンのパワーを感じさせる」

「インテリアではさまざまな素材と色を調和させた。落ち着いて洗練された表現にするために、鍵となるデザイン要素はバランスと魅力を考えて選んでいる。例えば、センターコンソールとドアトリムに採用した本杢のカーリーメープルは、美しく揺らいで輝く」

ダッシュボードのハンギングステッチは、ルーツが日本であることを連想させるダッシュボードのハンギングステッチは、ルーツが日本であることを連想させる

「もうひとつの特徴は、ダッシュボードのハンギングステッチ。これは日本の裁縫技術の『かけ縫い』にインスパイアされたものだ。ステッチの奥にあるスペースもユニークで、日本というルーツを連想させるデザイン要素になっている」

今回発表されたのは、国内のCX-60で言えば最上級の「プレミアムモダン」に相当するグレードだけ。ダッシュボードを含めて前席空間のデザインは「プレミアムモダン」そのものだ。もともとCX-60で欧州マツダから「日本的な内装を」と要望されて開発した「プレミアムモダン」だが、北米でもこれがイメージリーダーのグレードになるようだ。

「もっと多くの特徴があり、それは今後、皆さんとシェアすることになる」と椿チーフ。追加の発表を待ちたい。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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