【BMW M1000R 試乗】2台目の「M」はスーパーネイキッド!MotoGP譲りの空力性能がすごい…伊丹孝裕

BMW M1000R
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BMWモトラッドからニューモデルとなる『M1000R』が登場する。スーパースポーツですら軽々と置き去りできる、驚異のスペックとは!?

◆「M」を冠する二台目のモトラッド

BMW M1000RBMW M1000R

「M」の名を持つモデルは、BMWにとって特別だ。1978年に登場した『M1』を起源とし、BMWフリークでなくとも、歴代の『M3』や『M5』に憧れたドライバーは多いだろう。同社のウェブサイトを覗いてみると、Mの文字が付くモデルは、現在33機種にも及ぶ。ベースモデルはクーペ、セダン、カブリオレ、SUVと多様性に富み、今となっては欠かせないブランドになった。

ここまでは4輪界の話だが、実はBMWの2輪にもMブランドが存在する。2020年に発売された『M1000RR』が初のモデルとなり、その第2弾として2022年に「M1000R」を発表。間もなく、日本でも販売が始まる予定だ。

M1000Rは、『S1000R』から派生した上位グレードに相当する。そのS1000Rは、「スーパーバイク世界選手権」を戦うために開発されたスーパースポーツ「S1000RR」のネイキッド版で、レース由来のパフォーマンスを街中やワインディングで手軽に味わえるように落とし込まれている。

S1000RRは速さに特化し、S1000Rは快適さを重視。では、M1000Rは一体どんなポジショニングにあるのか。ごく簡単に表現するなら、S1000Rのフレンドリーさを維持、または向上させつつ、そこへS1000RRのハイスペックをぶっ込んだメーカーチューンドモデルである。

◆従来モデルをはるかに上回るエンジンパワー 最高出力は210ps

BMW M1000RBMW M1000R

スペックに関して、最も分かりやすいのが最高出力だ。165psだった従来のS1000Rに対し、M1000Rのそれは210psに到達。これは、やはり今春リリース予定の新型S1000RRとまったく同じである。BMWのみならず、多くのメーカーがスーパースポーツをベースにしたネイキッドをラインナップしている。俗にストリートファイターと呼ばれるカテゴリーで、その野蛮な語感とは裏腹に、エンジンの出力はかなりデチューンされているのがセオリーだった。

しかしながら、M1000Rにそんな遠慮はない。名だたるスーパースポーツ勢の中でもトップランクに位置するパワーを、わずか199kgの車重に押し込め、もちろんそれを制御するために、ありとあらゆる電子デバイスでライダーのスキルをフォロー。直接的な車名によって、このカテゴリーの象徴だった「ドゥカティ・ストリートファイターV4S」(1103cc/208ps/197.5kg)のスペックを上回ってみせた。

◆ワインディングへの没入を高めるコントロールユニット

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セパレートハンドルのS1000RRに対し、どうしたってフロント荷重が足りなくなるアップハンドルで、果たして210psのパワーを押さえられるのか。ちょっとバイクを知っている人なら懐疑的に思うだろうが、他のどんなストリートファイターと比べても従順だ。

選択したライディングモード(レイン/ロード/ダイナミック/レース/レースプロ)によって、トラクションコントロールやウィリーコントロール、スロットルレスポンス、コーナリングABS、エンジンブレーキコントロール、ブレーキスライドアシスト、サスペンションダンピング……といった各種デバイスのパラメーターが変化。いずれを選んでもプリセット状態に任せておけばよく、走り出してからはパワーのことをほとんど意識することなく、ひたすらコーナリングに没頭することができた。

BMW M1000RBMW M1000R

M1000Rに乗っている間、最も印象的だったのは、エンジンよりもハンドリングだ。歴代のS1000Rには明確に存在したフロントまわりのスリリングさが消え去り、狙ったラインをきれいにトレースしていく。スリリングさとはつまり、接地感の希薄さと、それに伴う挙動のシビアさだったわけだが、M1000Rはスピードレンジを上げても、バンク角を深くしても高いスタビリティをキープ。ガッシリと安定しているのに、車体がコンパクトに感じられるほど一体感が高く、コーナーの曲率が大きくても小さくても軽々と扱える、絶妙のバランスが与えられていた。

◆MotoGPから波及した空力技術「Mウイングレット」を搭載

BMW M1000RBMW M1000R

エンジンは刷新され、ディメンションにも微に入り細を穿つ改良が加えられている。とはいえ、S1000Rとはあまりにも印象が異なり、ましてや一気に45psも増強された上で、この安定感である。不可解な思いさえ抱いていたのだが、M1000Rにはあって、S1000Rにはない決定的な違いがひとつあった。サイドカウルから大きく張り出した、BMWが「Mウイングレット」と呼ぶ空力アイテムだ。

MotoGPの世界で急速に進化した昨今のトレンドが、まずはスーパースポーツに転用され、ついにはネイキッドにも波及した成果だ。デザイン的なインパクトもさることながら、ダウンフォースを生み出すエアロパーツとして機能。最大17.4kgの荷重を生み出し、フロントタイヤを路面に押しつける役割を果たしている。空気の流れは目には見えないが、その恩恵は確実にそこにあった。それが体感できた初めてのモデルだ。

◆最上位グレードのMコンペティションパッケージは332万8000円  

BMW M1000RBMW M1000R

試乗は、スペイン中南部の都市アルメリア郊外とサーキットで行われた。日本のシチュエーションとはアベレージスピードが大きく異なることを差し引いても、ウイングレットの効果は高い。それを日本で試せる日が待ち遠しい。

M1000Rは、スタンダードモデル(265万2000円)とMコンペティションパッケージ(332万8000円)から成り、発売は2023年3月24日を予定している。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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