来たる7月28日、「EV海外OEM・部品メーカーセミナー第8回 dSPACEのMBD戦略」が開催される。セミナーに登壇するのは、dSPACE Japan株式会社 代表取締役社長の宮野隆氏。
dSPACE社は、モデルベース開発(MBD: Model Based Development)における各種ツールを提供するリーディングカンパニーであり、日本の自動車メーカーも開発プロセスにおいて同社のツールを活用している。
今回のセミナーの内容は以下のとおり。
1.dSPACE & dSPACE Japanの紹介
2.MBDプロセスの概要とメリット・デメリット
3.EVへのMBDの適用について
4.MBDの将来動向
5.ディスカッション・質疑応答
講演後に、本セミナーのモデレーターである日本電動化研究所 代表取締役の和田憲一郎氏を交えて、参加者からの質疑応答やディスカッションの時間が用意されている。
セミナーの詳細はこちらから。
宮野氏に、セミナーの見どころを聞いた。
■MBDにおけるHILSの重要性
dSPACE社は、車載ECUの開発を支援するMBDシステムを提供している。ECUの開発に関するありがちな問題やハードルを、MBDによって解消する方法について宮野氏は説明する。
「近年、自動車業界はCASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))と呼ばれる4つの技術革新によって、100年に1度の変革期を迎えていると言われています。特に電動化の部分については環境への負担軽減として急務であり、各社しのぎを上げて開発を行っており、品質の高いシステムを素早く市場に出す事が求められています。」
「車載ECUの通常の開発フローは、自動車メーカーからサプライヤーへECU開発の依頼があり、完成したECUは自動車メーカーで検証されます。この過程で、メーカーからハードウェア要求仕様書とソフトウェア要求仕様書が提出され、ハードウェアが完成した段階でソフトウェアが実装され、再度検証されます。」
「この流れには幾つかの問題が存在します。たとえば、ハードウェアとソフトウェアの仕様書に機能の漏れや抜けがあったり、仕様書の内容が曖昧でサプライヤー側で誤解釈が生じたり、サプライヤーの設計不良による動作不良などが挙げられます。これらの問題は、何度もECUを作り直し、戻し、再度作り直すという時間とコストがかかる修正フローが発生します。」
「これらの問題を解決し、高品質なECUを効率的に開発するためには、モデルベースの開発が有効とされます。その一連のプロセスですが、まず、コンピュータ上でのモデル制作と検討が行われ、このモデルを用いて実機を動かします(RCP: Rapid Control Prototype)。さらに、このモデルから自動コード生成が行われ、量産向けCコードが作られます。その後、HILS(Hardware in the Loop Simulator)による検証が行われ、最終的に実機での検証ということになります。」
「HILSとは、実際の車を動かすためにはECUや実物のアクチュエーター、センサーが必要になるため、それらをシミュレーターで検証する手法です。全く同じ挙動をするシミュレーターを用いて、車両が無い状況でテストすることが可能であり、危険なテストを直接車両で行うことを避けることができます。検証対象がハードウェアで、それをループの形で検証することからHILSと呼ばれます。」
「具体的には、HILSは電気的なインターフェース、I/Oモデル、およびプラントを提供します。これらはリアルタイムプロセッサー上で動作し、センサーの信号を生成し、アクチュエーターへの信号を受け取るという、ECUとは逆の形でHILSが動作します。」
「HILSで検証する項目は、ECUの機能確認や、センサーやアクチュエーターの故障時に対するテストなどです。また、バッテリー電圧が異常に低下した場合の対応や、オンボード診断(OBD)の機能検証なども可能です。さらには、ECU間のネットワークテストも可能で、例えば20個のECUを使用している場合、バッテリー電圧が低下して一部のECUがスリープ状態になったときに、システムが正常に動作するかどうかも調べることができます。」
「HILSのメリットとしては、実機がなくてもECUの検証が可能であり、検証効率が向上する点が挙げられます。例えば、雪上での運行状況をテストする場合、実際に雪が降るのを待つ必要がなく、シミュレーター内で条件を調整するだけで検証が可能となります。また再現性も重要な特徴で、発生した問題を繰り返しパラメータを変化させて再現することができます。さらにHILSはコンピューターベースのシミュレーターであるため、24時間365日テストを行うことができます。そして、すべてがコンピュータファイルであるため、テストシナリオや検証環境モデルなどを再利用することが可能です。」