補助金ありきの急速充電器の設置、採算性の見極め…EV充電事業におけるエネチェンジの問題提起

エネチェンジ 代表取締役CEOの城口洋平氏。
  • エネチェンジ 代表取締役CEOの城口洋平氏。
  • 海外の充電器事業者についての動向も語られた。
  • 城口氏によると、高速道路のSA・PA、道の駅に対しては、機器・工事ともに補助率100%でよいが、その他の場所については、機器補助率50%、工事補助率100%でいいのではないかとのこと。
  • 東京都は充電設備の維持にも補助金を出している。
  • 東京都という過密地帯の状況を鑑みて、公共用で優先される施設や高い利用率の見込まれる施設に対しては、機器補助率100%でよいが、基礎充電施設については機器補助率50%でいいのではないかとのこと。
  • 設置後は維持管理費や電気代は必要ないと城口氏は提案。設置事業者が責任を持ってインフラサービス継続可能な案件検討と設置を促すためにも、電気代補助などは撤廃すべきとのこと。
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エネチェンジ(ENECHANGE)は11月28日、都内にてメディア向け勉強会を開催した。この勉強会は、エネチェンジが急速充電器の補助金制度や、海外充電インフラ事業者の状況について、代表取締役CEO 城口洋平氏が見解を述べるといったもの。北米、欧州などの充電インフラ事業にも詳しい城口氏ならではの視点も交えて説明が行なわれ、興味深い勉強会となっているのが特徴だ。


◆補助金ありきの急速充電器の設置は見直すべき

最初に城口氏は、急速充電器の補助金見直しについての見解を述べた。城口氏は、急速充電器の設置における充電インフラ補助金制度について、政府の補助金制度には問題があると指摘。これは90kW以上の急速充電器の補助率が一律、機器・工事補助率ともに100%であることから、高速道路のPAやSAなど公共用充電器として設置すべき優先度の高い場所だけでなく、一般の商業施設などに積極的に設置を推進する事業者が現われているためだという。

まだ商業施設、宿泊施設、観光施設などの目的地充電施設は公共性があるが、マンション、月極駐車場など基礎充電施設への設置は公共性に疑問が残る。しかしいまの補助金制度では、これらすべて100%補助されることを意味し、ほとんど電気自動車が使われないような過疎地でも充電器設置の費用が補助金でまかなわれることとなる。このようなことから城口氏は経済産業省に対し、高速道路のPAやSAなどは100%補助でもよいが、目的地充電施設、基礎充電施設は設置するかどうかの検証を必要とし、高速道路のPAやSA、道の駅など以外は、機器補助率50%、工事補助率100%程度に制限すべきではないかと提案しているとのことだ。

◆東京都はさらに補助金を出し一部事業者のモラルハザードを誘発

また東京都も補助金制度があり、東京都充電設備普及促進事業と充電設備運営支援事業のふたつの柱で設置が進められている。しかしこちらについても城口氏は、問題点があると語っていた。

現在は高速道路のPA、ガソリンスタンド、所業施設、マンションなど、どこに設置するにも10kW以上の急速充電器の機器補助率は100%となっている。また電気代や維持管理費にも補助金があてがわれ、設置後最大5年間の電気代補助(超急速上限310万円/年、急速上限60万円/年)、3年間の維持管理費の補助(上限40万円/年)が受けられるといった状態。これらについて城口氏は「東京都という地域特性を鑑みて、公共用で重要度の高い施設、基礎充電代替になりうる商業施設への急速充電器設置は補助率100%でもよいのではないか。ただし、マンションや月極駐車場などの施設は設備補助率を50%にするのがよい。そして維持管理費や電気代に対し補助金を出すのは撤廃すべきだ」と提案している。


《関口敬文》

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