水素サプライチェーン構築とCO₂分離回収技術で、カーボンニュートラル実現とビジネス化を両立…川崎重工 [インタビュー]

水素サプライチェーン構築とCO₂分離回収技術で、カーボンニュートラル実現とビジネス化を両立…川崎重工 [インタビュー]
  • 水素サプライチェーン構築とCO₂分離回収技術で、カーボンニュートラル実現とビジネス化を両立…川崎重工 [インタビュー]
  • 水素サプライチェーン構想
  • エネルギーの輸送方法。川崎重工は水素を液化して運搬する方法に注目している
  • 水素発電ガスタービン
  • 水素モビリティ
  • 「空気直接回収(DAC)」技術

来たる5月21日、オンラインセミナー「【池田直渡の着眼大局セミナー】第3回 ~川崎重工の水素サプライチェーン構築とCO₂分離回収技術~」が開催される。

今回のゲスト講師は、川崎重工業株式会社 水素戦略本部企画部コミュニケーション課 課長の加藤美政氏と同社 技術開発本部技術研究所エネルギーシステム研究部 部長の田中一雄氏。カーボンニュートラル社会の実現に向けて同社が取り組んでいる、水素を供給し利用につなげる事業戦略と二酸化炭素の回収技術をテーマに講演する。

モデレーターの池田直渡氏は、自動車ジャーナリスト・自動車経済評論家として幅広いメディアで健筆をふるい、クルマのメカニズムと開発思想に対する深い洞察力を各所で発揮している。

当日は、川崎重工からのプレゼンテーション、池田氏との講師によるディスカッションに加え、視聴者からのQ&Aセッションの時間も用意される。

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セミナーは以下の内容で進められる予定だ。

1.総合重工メーカーとしてカーボンニュートラルの実現に向け、技術開発に取り組む意義
2.水素サプライチェーンの構築
(1)なぜ水素・液化水素に着目したのか
(2)政府の動き
(3)水素供給の道のりーパイロット実証から商用化まで
(4)水素利用技術の開発―発電からエンジンまで
3.CO₂分離回収技術の実証と大規模DAC設備の開発
4.対談・質疑応答

本稿ではセミナーの開催に先立ち、川崎重工のカーボンニュートラルの取り組み及びそれに関連する事業展開と、加藤氏、田中氏に聞いたセミナーの見どころを紹介する。


「水素は“切り札”」 次世代エネルギーとして注目される理由

川崎重工は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて水素に注目し、「水素サプライチェーン構想」を打ち出した。水素を次世代エネルギーとして実用化するため、液化水素運搬用大型タンカーの設計・建造を進めているという。

加藤氏は、「水素は無毒・無臭であると同時に、使用する際にCO₂を出さない“究極のクリーンエネルギー”であり、産業やモビリティなど幅広い分野での脱炭素に貢献する」と、その可能性に期待を込める。枯渇の心配もなく、長期貯蔵や長距離輸送が可能なメリットもある。

2050年までのカーボンニュートラル実現のために、再生可能エネルギーの活用は急務となっている。しかしながら、風力や太陽光発電だけでは安定したエネルギーの確保は難しい。川崎重工は、「様々な所でつくれて、運んで貯めることのできるエネルギーである水素」に注目し、「脱炭素化およびエネルギーの安定供給に対する“切り札”」(加藤氏)と位置付けている。

日本政府は2017年に水素社会加速化の実現に向けた「水素基本戦略」を打ち出した。昨年には改定が行われ、2040年までに年間1200万トンの水素を導入するという目標が設定されている。官民合わせ、今後15年で15兆円が投資される計画もあるという。水素の大量導入に伴い、海外からの輸入水素が不可欠となる。

水素サプライチェーン構想

はこぶ:海外からの大量輸送には液化水素

海外から水素を効率よく運ぶためには、キャリア変換が必須だ。川崎重工は水素を液化して運搬する方法に注目。水素はマイナス253℃で液化し体積は800分の1となる。常温で気化させれば、様々なアプリケーションに活用できるメリットもある。同社では、これまで培ってきたノウハウを基に液化水素のサプライチェーン構築を目指す。カギとなるのは、同社が長い間「LNG運搬船と液化水素貯蔵タンクの製造で培ってきた高性能な断熱技術」(加藤氏)だ。

2022年2月には、オーストラリアでつくった水素を液化し、マイナス253℃に保ったまま日本に運ぶパイロット・プロジェクトに成功した*。将来は1度に約1万トンもの液化水素を運べる大型運搬船を複数隻就航させ、大量の水素を複数のルートで日本に運ぶ計画だとしている。
* 川崎重工を含む、技術組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)がNEDO助成事業として実施

エネルギーの輸送方法。川崎重工は水素を液化して運搬する方法に注目している

つかう:利用技術の拡充に向けて

ロケット燃料や石油精製などの産業分野における水素の利用は従来から行われてきた。現在は、燃料電池車(FCV)やバス、家庭用燃料電池(エネファーム)などにもその活用範囲が広がっている。「近い将来には、航空機や鉄道などのより大きなモビリティや、発電などにも利用を広げることが水素社会の実現につながる」と加藤氏は話す。


《石川徹》

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