パナソニックの誤算、成長領域の車載電池事業で実質赤字に…2024年3月期決算

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  • パナソニックの車載電池。右端が新型電池の「4680」
  • テスラ・モデルS向けに供給されているパナソニックのリチウムイオン電池セル

パナソニックホールディングスが成長領域と位置づけている3つのうちの1つである車載電池事業がさえない。5月9日に行われた2024年3月期の決算会見でも、その関連の質問が約半分を占めた。


2024年3月期の連結決算は、売上高が前期比1.4%増の8兆4964億円、調整後営業利益が同24.2%増の3900億円、営業利益が同25.1%増の3609億円、当期純利益が同67.2%増の4439億円だった。純利益については過去最高を更新した

◆IRA補助金を除くと減益

「売上高は、くらし事業、インダストリー、エネジーが減収となったが、オートモーティブ、コネクトの販売増に加え、為替換算により増収となった。調整後営業利益は、インダストリーが減益となったが、くらし事業、オートモーティブ、コネクトの増益に加え、IRA(米国インフレ削減法)補助金により増益。しかし、IRA補助金を除くベースでは減益となった」と梅田博和CFOは今回の決算を総括した。

なかでもIRA補助金の対象となっている車載電池が属するエナジーは、売上高が前期比6%減の9159億円、調整後営業利益が前期に比べて550億円増加の946億円だった。しかし、IRA補助金を除くと318億円減の78億円。さらに、車載電池だけを取り出すと、国内工場の減販損や過去の不具合品対応費用の影響が大きく、前期の107億円の黒字から悪化し、187億円の赤字となっている。これについて、「重く受け止めている」梅田CFOはと話し、忸怩たる思いがあるそうだ。

◆ギガファクトリーで車載電池の生産をスタートしたが

パナソニックは2017年、米EVメーカーのテスラと共同でギガファクトリーをネバダ州に建設し、円筒形の車載電池の生産をスタートした。しかし、なかなか軌道に乗らず、テスラと丁々発止をしながら、なんとか21年3月期に黒字化。、梅田CFOも「黒字が定着してきている」と喜んでいた。

ところが、各国のバッテリーEVに対する補助金の打ち切りや減額などで、BEVの需要が失速してしまった。当然、車載電池にも影響が出る。パナソニックとしては、せっかく黒字化し、これから大きく儲けようとしたときに、出鼻をくじかれた格好だ。

◆和歌山とカンザスに新工場、中国には進出せず

2025年3月期についても、和歌山とカンザスの新工場立ち上げ先行費用を300億円見込んでいることから、改善幅は17億円にとどまり、170億円の赤字となる見込みだ。「今後も、北米の生産性向上やロスコスト削減、国内の固定費の絞り込みを行いつつ、新工場の順調な立ち上げに向けた取り組みを推進し、早期の利益改善に努める」と梅田CFOは説明する。

和歌山工場は24年度第2四半期、カンザス工場は第4四半期に量産を開始する予定となっている。和歌山工場では新型電池の「4680」を生産することになっている。パナソニックはスバルとマツダに電池を供給する契約を結んでおり、この和歌山工場から供給するものと見られる。一方、カンザス工場は量産を開始してから徐々に能力を上げていき、26年度から30GWに近いところまで稼働していく計画だ。


《山田清志》

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