EVはコンパクトの時代へ、BYD ドルフィンの販売目標は期待を込めて1100台

BYDドルフィン(エントリーモデル)
  • BYDドルフィン(エントリーモデル)
  • BYDドルフィン(ロングレンジ)
  • BYDオートジャパン 代表取締役社長 東福寺厚樹氏
  • BYD ドルフィン 価格発表会
  • BYD ドルフィン 価格発表会
  • ロングレンジは1クラス上のスペック
  • 日本特別仕様といっていい設定も
  • ADAS、安全装備にグレード差をつけないのはもはや常識

9月20日、BYD『ドルフィン』の価格が発表になった。エントリーモデルの価格は363万円と、CEV補助金(65万円)を適用すると200万円台というコンパクトカーとして競争力がある設定となった。

◆2モデル展開、安全装備に違いはなし

発表されたモデルは、「BYD ドルフィン」(エントリーモデル)と「BYDドルフィン ロングレンジ」の2種類。ロングレンジは、すでに発売されている『ATTO 3(アットスリー)』のプラットフォームやパワートレインをそのままコンパクトカーサイズにしたような設定で、スペック上は上位クラス並みになっている。

BYD ドルフィン 価格発表会BYD ドルフィン 価格発表会

航続距離はエントリーモデル400km(WLTC)に対して、ロングレンジは476km(同前)。バッテリー容量だけ(エントリー:44.9kWh、ロングレンジ:58.56kWh)でなく、モーター出力(同前以下同:70kW、150kW)、トルク(180Nm、310Nm)、リアサスペンション(トーションビーム、マルチリンク)、DC充電能力(65kW、85kW)などが異なる。

装備関係では、ボディーカラーがモノトーンかツートンか、パノラミックガラスサンルーフか、パワーウィンドウが全席オートモードかスマホのワイヤレス充電がついているかといったところだ。ロングレンジの価格は407万円と設定された。

しかし、両モデルの違いはこれくらいで、ADAS系の安全装備に違いはない。さらに日本仕様向けの装備として、フロントトラフィックアラート/ブレーキ(直交する車両の検知とブレーキング)、ドライバー注意喚起機能(運転操作からドライバーの疲労を検知・警告)、幼児置き去り検知システム(ミリ派レーダーによる生体検知)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置(5km/h以下で作動)などが追加されている。

◆機械式駐車場に対応した車高

ボディサイズは全長4290×全幅1770×全高1550mm。グローバルモデルの全高は1570mmあるが、このサイズだと日本の機械式駐車場の高さ制限を超えてしまうことがある。駐車やマンション購入の妨げになるとして、日本仕様は20mm低くしている。20mmはサスペンションやタイヤ、ボディなどを変更するのではなく、ルーフのアンテナ形状を工夫することで実現した。

BYD ドルフィン ロングレンジBYD ドルフィン ロングレンジ

ホイールベースは2700mmと、マツダ『CX-5』や日産『エクストレイル』とほぼ同じサイズだ。車室内を広く確保できるので後席が狭いといったこともないだろう。タイヤの切れ角などを工夫しているので、最小回転半径は5.2mとトヨタ『カローラクロス』と同じくらい小回りがきくという。

以上のようにドルフィンは、日本市場をよく研究している。同社のアンケート調査でもEV購入で検討したいサイズのトップが「コンパクト」だったという。

◆小型EV市場の掘り起こしに向けて

EVというとバッテリーを積む必要があるのでSUV、もしくは高級セダン、Dセグメント以上の車しか作れない、売れないといった論調が一部ではある。しかし、中国、EUに目を向けるとEV市場はコンパクトサイズ、普及モデルに向かっている。

中国ではLEAPMOTORのような小型EVを得意とするメーカーの成功例が出始めている(もちろん失敗しているメーカーもあるが)。同社の『T-03』はサイズやターゲットユーザーで、五菱の『宏光MINI』対抗とされるモデルだ。だが、宏光MINIより高機能、豪華装備で150万円前後の価格でヒット商品となっている。

EU圏では『MG4』、ダチア『スプリング』、ルノー『ゾエ』、プジョー『e-208』のようなコンパクトEVが根強く売れている。中国勢の攻勢などで逆風が叫ばれるEUのEV市場ながら、VWは『ID.2』の発売準備に余念がない。IAAモビリティ2023では、『ゴルフGTI』のEVモデルを発表した。メルセデスは新しいデザインコンセプトとともに、Aクラスに属する『CLA』のコンセプトモデルを発表している。

日本でも日産『サクラ』、三菱『ekクロスEV』のヒットが、潜在していた小型EVの市場を掘り起こしている。これは、「軽」という特殊な車種だからというわけでもない可能性がある。BYDのアンケートでは、EVの購入検討要素に「航続距離」も高いニーズがあったという。

BYDのATTO 3とドルフィンは、ともにグローバルで50万台の製造・販売の実績がある。日本では2023年2月から正式に車両(ATTO 3)の販売を開始し、8月までの半年でおよそ700台の登録台数を達成した。台数の評価はいかようにもとれるが、輸入車でほぼ毎月100台売れているブランドはMINIやアウディに匹敵する。

20日の価格発表会では、BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は「24年3月までに、ドルフィンはエントリーモデル800台、ロングレンジ300台の合計1100台を販売したい」と期待含みながら強気の発言をしていた。

BYDオートジャパン 代表取締役社長 東福寺厚樹氏BYDオートジャパン 代表取締役社長 東福寺厚樹氏
《中尾真二》

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