ブレーキトラブル回避のカギは「穴」にあり! スリットやドリルド、ブレーキのパフォーマンス向上の裏技とは?~カスタムHOW TO~

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スポーツカーのブレーキローターによく見られる穴や溝。これにはスポーツ性能をアップさせるための意味がいくつも込められている。

◆社外ローターにある溝や穴ってどういう意味がある?

古くからスポーツカーのブレーキローターにはたくさんの穴が開けられている事が多い。ドリルドローターと呼ばれるものだ。ほかにも溝が掘ってあるスリットローターや、ドリルドのように穴が掘ってあるが貫通していないディンプル形状になっている場合もある。

それには大きく分けてガス抜きとパッドのリフレッシュというふたつの意味がある。

まずブレーキパッドはさまざまな繊維と樹脂、それに金属粉を混ぜて高温で圧縮して固めてある。純正パッドのような耐熱性は低く、鳴きにくくダストも少ないパッドの場合、成分のほとんどは繊維と樹脂。対するサーキット用の高温に耐えるパッドは金属成分がたくさん入れられている。耐久レース用では焼結パッドと呼ばれるものになり、これはほぼ金属成分でそれを焼き固めてあるのだ。

この金属成分と樹脂の量が問題で、樹脂が多いほど高温になるとこの成分が燃えやすい。燃えることで煙(ガス)が発生する。サーキット走行をするとピットインしてからパッドから煙が出ていることがあるが、これはこのパッドの成分が燃えて煙が出ているのだ。

そして、この煙が問題。パッドの表面からこのガスが発生すると、パッドはローターから瞬間的に浮いてしまう。その時にブレーキを踏んでもパッドとローターの間にはガスがあるので摩擦が発生しない。ブレーキがまったく効かなくなってしまう。これがフェード現象と呼ばれるもの。

◆ブレーキに関わるトラブルに要注意!
命に関わるパーツだからこそTPOが重要となる

もうひとつブレーキトラブルとして起きがちがベーパーロックはブレーキフルードが沸騰。発生した気泡がブレーキホース内にあり、ブレーキを踏んでもこの空気が潰れるだけで油圧が伝わらなくなってしまうもの。こちらもブレーキが効かなくなって大変危険だが、突然ブレーキがまったく効かなくなるというよりは、どんどんブレーキの効きが甘くなって来る。

対するフェード現象は3秒前までブレーキが効いたのに、突然まったく効かなくなることがり大変危険な現象なのだ。

そこでレース用などのパッドは金属成分を増やしてガスを発生しにくくしている。その代わりに街乗りの温度域ではダストや鳴きも強く、快適に使えるとは程遠いことが多い。

というわけで、レース専用パッドでなければある程度高温になるとガスが発生してしまう。ならばそれを排出すればいいと生まれたのがドリルドの穴やスリットなのだ。パッド表面に発生するガスを排出。フェード現象をある程度防ぐことができるのだ。

また、特にスリットローターにはパッドのリフレッシュ効果も期待できる。これはスリットの溝がパッドの表面を通過するためにカンナで削るように微妙にパッドの表面を削っていく。

これによって高温になってパッドの表面が炭化してしまったときにも、徐々に削ってリフレッシュしてくれるので、効きやタッチの悪化を防げるのだ。そのためにスリットの数や角度なども各社ノウハウを持って設定している。

スリットは角度がつけられて入れられている。この回転方向でもリフレッシュ効果が変わると言われていて、一般的にはスリットの外周が先にパッドの接する回転方向の方がリフレッシュ効果が高いと言われている。

しかし気をつけたいのは、リフレッシュ効果があるということはパッドが減りやすいということでもある。プレーンローターに比べるとパッドの消耗は1.5~2倍くらいの速さになると言われている。それほどリフレッシュ効果を引き換えにパッドの消耗は早くなるのだ。ドリルドではそこまでではないにしろ、ある程度減りが早くなると認識しておきたい。

また、リフレッシュ効果があることとスリットのエッジによる効果で同じパッドでもブレーキの効きは強くなる傾向にある。やや効き始めから強く効くので、その点ではセッティングパーツとしても使えるが、効きすぎな傾向のパッドだとさらに効いてしまうので注意が必要だ。

ブレーキローターの穴や溝にはガス抜きの意味と、効きをコントロールできる側面もある。だが、いずれも街乗りオンリーならほぼほぼ性能を活かす場面が無いとも言えるので、普段乗りしかしないならプレーンローターで十分。むしろライフを考えるとプレーンローターを十分にアリな選択となる。

《加茂新》

加茂新

加茂新|チューニングカーライター チューニング雑誌を編集長含め丸15年製作して独立。その間、乗り継いたチューニングカーは、AE86(現在所有)/180SX/S15/SCP10/86前期/86後期/GR86(現在所有)/ZC33S(現在所有)。自分のカラダやフィーリング、使う用途に合わせてチューニングすることで、もっと乗りやすく楽しくなるカーライフの世界を紹介。

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