乗用車の任務は、どこまでも人間を安楽快適に運ぶこと。それを知り尽くしてこそ、こういうセダンを作れる。日本に蔓延するベンツ・ビーエム症候群に対して、こんなに強烈なカウンターパンチはない。
全長5m級とボディが大柄なうえに、前の端に横置きエンジンを押し出したFFだから、室内の広さは半端ではない。リアシートの快適さなど超大型のリムジンに匹敵する。サードウインドが後ろまで伸びているので、斜め後方もよく見える。
そんなインテリアをさらに快適にするのが独特の「空気と液体」のサスペンション。細かい凹凸はトトトッと拾うが、大きなうねりや段差など完全に無視。柳に風と受け流すというより、シュワッと吸い込んでしまう感じだ。突起を踏んだ瞬間、サスペンションが自分からスッと縮むとさえいえる。
コーナリングは徹底的にフロントのグリップに頼り、切った方向に強引に持って行く。それでも並みのスポーツカーより軽快だったりする。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★☆☆
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
熊倉重春| モータージャーナリスト
東京・焼け野原の戦後第一期生。25年間クルマ雑誌に勤めて何でもやったので、フリーのジャーナリストになった今でも何でもやる。いや、クルマのことなら何でも首を突っ込みたがる。今最大の関心事はエネルギー問題。