EV普及へ、日本の自動車メーカー各社の開発は今

ホンダe:Nシリーズ
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世界各国がカーボンニュートラルに向かう中、注目されているのがEV。今後の普及拡大が見込まれる。そんな中、日本の自動車メーカー各社はどのように開発を進めているのか確認してみたい。

ホンダは2040年までにEVとFCVのみにすることを明言

ホンダeホンダe日本の自動車メーカーで、EV戦略のゴールを明確にしているのはホンダのみだ。2040年までにEV、または燃料電池車(FCV)のみにすると、今春就任した三部敏宏社長が明言した。現実的にはまだ『ホンダe』しか販売していないが、中国市場へ向けてはSUV(スポーツ多目的車)の『ヴェゼル』を基にしたという、SUV、クーペ、GTのコンセプトカーを発表し、EV販売強化を打ち出している。

EV販売で先行の日産と三菱は共同開発の軽EVなどを計画

量産EVの先駆けとなった三菱 i-MiEV量産EVの先駆けとなった三菱 i-MiEVEV販売で先行した三菱自動車工業と日産自動車は、三菱自が経営の柱を電動化とSUVの2本に集中するとしており、『エクリプスクロス』や『アウトランダー』のPHEVを販売する一方、EVについては軽商用の『ミニキャブミーブ』を残すのみで、来年日産とともに発売が予定されるという軽自動車の乗用EVが次の候補となる。三菱自は、2009年に軽自動車の『i-MiEV』を発売しており、軽EVでは先行的な立場にある。

日産アリア日産は、SUVの『アリア』の予約注文を受け付けている。そして三菱自との共同開発による軽乗用EVを来年には発売予定だ。

一方、初代『リーフ』のあと市場導入された『e-NV200』については、欧州向けに後継となる『タウンスター』が今年9月に発表されているが、国内情報はまだない。中期経営計画のなかにEVは含まれるが、上記以外のEV戦略について、全体的な具体像はまだ明らかではない。

トヨタはbZ4Xを足がかりに、25年までに17車種のEVを予定

トヨタ bZ4Xトヨタは、来年発売予定の『bZ4X』の概略を発表した。一充電走行距離は、現在のEVの水準に達しているといえる。航空機を思わせる斬新な運転席周りの提案を行っている。だが、販売市場の優先順位や規模などはまだ明確ではなく、日本市場にいつ導入されるのかもわからない。2025年までに17車種のEVを追加導入するとしている。トヨタ車は国内だけでも登録車のみで30車種前後ある。国内へは将来的にどのような車種体系でEVの浸透をはかっていこうとしているのかまだ見えていない。

SUBARUは北米向けSUVから、マツダのレンジエクステンダーは来年以降の見込み

トヨタのbZ4Xの概略発表を受け、共同開発をしていると表明してきたSUBARUも、いよいよ同社初のEV『ソルテラ』を発売予定だ。まずは北米市場が主体と考えられ、導入車種はSUBARUが強みを発揮できるSUVだ。

マツダMX-30マツダMX-30マツダは、『MX-30』をまずマイルドハイブリッド車で売り出したあと、EVのMX-30を発売した。ロータリーエンジンを発電用に使ったレンジエクステンダーは、来年となるようだ。

EV普及へは、充電設備の整備も課題

日本国内では、EV充電の基本となる自宅での200V普通充電を、マンションなど集合住宅でできにくい状況が10年以上解決されずにいる。

日本政府によるグリーン成長戦略は、この先10年間でEV導入を強力に進めるとしているが、単に補助金や減税といった金銭での誘導だけでは普及しないことが明らかだ。集合住宅や月極駐車場で当たり前に充電できる環境整備がまず重要で、幹線道路や高速道路などの急速充電器の整備はその次で十分であり、たとえ自動車メーカーがEV導入に奮闘しても、集合住宅での普通充電整備のための法改正など、マンション管理組合や、マンション開発業者、そして不動産業者を含めた普通充電への意識改革なくして、EV普及は実現しえないのである。

《御堀直嗣》

御堀直嗣

御堀直嗣|フリーランス・ライター 玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

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