オープンモデルとレースのDNA:マセラティ…オートモビルカウンシル2023

マセラティ MC20チェロ
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マセラティジャパンはオートモビルカウンシル2023に『MC20』のオープンモデル、「MC20チェロ」と、『ミストラル・スパイダー』を展示している。

マセラティ MC20チェロマセラティ MC20チェロ

◆どちらもクーペとオープンをラインナップ

マセラティジャパン代表取締役兼アジアパシフィック地域統括責任者の木村隆之氏は、オートモビルカウンシルのテーマ、“Classic meets Modern and Future”というテーマのもと、「マセラティのオープントップの歴史と未来を見てもらえる展示を用意した」という。その背景にあるのは、マセラティにとってオープンモデルは非常に重要な存在だからだ。1947年にデビューした『A6 1500』というマセラティ最初のロードカーにはすでにオープンモデルもラインナップされていたのだ。

木村氏によると、「もともとレースカーとして生まれたマセラティにとって、軽量、低重心、かつ風を感じて走るスポーツカーの魅力をロードカーにも求めていくことはごく自然なことだった。時代とともに長距離を快適に走れるグランドツアラーとしての優れたパフォーマンスはそのままに、美しい自然と一体化するオープントップのエレガントな走りが求められるようになった」と現在に至る系譜を語る。

さて、オートモビルカウンシルのテーマに沿って展示された車両は、Classicでは1964年の『ミストラルスパイダー』だ。3500cc、3700cc、4000ccの3つのタイプのエンジンがあったが、展示車は3500ccだ。

マセラティ ミストラルスパイダーマセラティ ミストラルスパイダー

そして、Modernでは2020年に、「ブランドの再スタートの発表を示すべく誕生したMC20のオープントップバージョンで、初お披露目となるMC20チェロだ」。Futureに向けてはこのMC20のデザインはそのままに、フル電動化モデルの『フォルゴーレ』がある」と未来を見据えたラインナップとされた。

マセラティ MC20チェロマセラティ MC20チェロ

◆レーシングのDNA

MC20の来歴について、同社業務執行取締役ジャパンジェネラルマネージャーの玉木一史氏は次のように説明する。「MCはマセラティ・コルセ(レーシング)の略。これは私たちの中に息づくレースのDNAを表している。20はマセラティの新時代到来を発表した2020年に由来。そしてチェロはイタリア語で空を意味している」とのことだ。

そもそもMC20チェロのベースとなったMC20は、「長距離をスポーティに楽しめるのが特徴」というのは、同社アジアパシフィック&ジャパンプロダクトマーケティングマネージャーの山本文吾氏だ。マセラティのアイデンティティとして、「レース用のエンジンを乗用車に搭載し、長距離も楽しく走れる。同時にレースシーンでも楽しめるというのがコンセプトがある」という。実際にMC20ユーザーからの声も、「サーキットも楽しめ、また一般道で乗っても十分楽しめる素晴らしい足の設定だ。エンジンのフィーリングもすごく良いという評価をもらっている」と述べる。

MC20クーペと同じネットゥーノエンジンが搭載されていることも大きな特徴だと山本氏はいう。「V型6気筒3リットルエンジンだが、マセラティ『MC12』はV型12気筒6リットルで630馬力。MC20はその半分で同じ630馬力を発揮している」というのでかなり効率の良いエンジンといえそうだ。また、「プレチャンバー、副燃焼室を採用することによって低速域からかなりのトルクフルなエンジンになっているので、0-100km/hの加速性能や、サーキットを走る時のパフォーマンスなども他ブランドに負けてはいません」とコメント。こういった性能からも、サーキットともに、トルクフルなエンジンのおかげでグランドツアラーや街中での乗りやすさにもつながっていることを示唆する。

◆たった65kg増

MC20チェロの重量はMC20クーペと比べて65kg増加にとどめた。玉木氏によると、「クーペと同様の軽量で高剛性なボディにより、圧倒的な加速と卓越したハンドリングをもたらすMC20チェロは、スポーティさとラグジュアリーを完璧に融合したモデルだ」と紹介。

マセラティ MC20チェロマセラティ MC20チェロ

この僅かな重量増にとどまった理由を山本氏は、チェロというクルマを面白い表現で説明する。それは、「誤解を恐れずにいうならば、クーペの屋根が開くだけのクルマ」だと。しかし、これには深い意味が隠されている。通常クーペボディからオープンボディにするためにはボディ剛性を確保するためにかなりの補強をしなければならない。しかし、それでもどうしても弱い部分が出てしまい、ねじれや振動を感じてしまうものだ。

しかしMC20はバスタブ型のカーボン製モノコック構造で、この部分でボディ剛性を確保していることから、ルーフ部分は剛性に影響を及ぼしていないのだ。山本氏によると、「これはインディや日本のスーパーフォーミュラなのマシンのシャシーを提供しているダラーラ社によるものなので、こういった設計が可能だったのだ」と語った。その結果として、65kg増はルーフ開閉に伴う4つのモーターや、アーム類、安全用の補強などといった最小限の重量増で済んでいるのだ。

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そのルーフ部分は開閉式ガラスルーフを採用。これはエアバス350にも用いられている光分子分散型液晶と呼ばれる技術による、最先端のエレクトロクロミックスマートガラスウィンドウにより、ボタンを押すだけで瞬時に透明からスモークガラスへと変化させることが可能」(玉木氏)とのこと。その結果、「コックピット内では多彩な感覚を味わっていただくことができる。ルーフをスモークガラスの状態にすれば包み込まれるような感覚。ルーフが透明な状態では光があふれるような空の美しさを楽しむ感覚。そしてルーフトップを格納すれば、風と外の世界をオープンエアで全身に感じてもらえるだろう」と玉木氏はコメントした。因みにルーフの開閉時間は12秒以内であるという。

◆学習機能を持ったブレーキ

もうひとつ、山本氏はMC20とチェロの特徴としてブレーキ性能を挙げる。「ブレーキバイワイヤを採用し、非常にコントロールしやすくなっている。走行中、Gがかかっていると踏力が安定しにくい。そこをフォローしてくれたり、将来的にはフォルゴーレ(BEV)の回生ブレーキも考慮したもの」という。ここに学習機能も付帯された。「最初は違和感があるかもしれないが、学習を重ねるにしたがって、コントロール性が高くなり、まるで自分の運転が上手くなったかのような走りが楽しめるようになる」と語った。

これら3つを踏まえ、MC20とチェロは、「マセラティブランドが総力を挙げて現在のスポーツカーを提案したクルマ」(山本氏)と位置づけ、マーケティング云々以前にマセラティが作りたいと思った通りのクルマを作ったというイメージを抱かせた。

マセラティジャパン代表取締役兼アジアパシフィック地域統括責任者木村隆之氏(左)とマセラティジャパン業務執行取締役ジャパンジェネラルマネージャーの玉木一史氏マセラティジャパン代表取締役兼アジアパシフィック地域統括責任者木村隆之氏(左)とマセラティジャパン業務執行取締役ジャパンジェネラルマネージャーの玉木一史氏
《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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