低圧契約で高圧インフラ整備:急速充電器設置の最大のネックを解決するパワーエックス【特集 EV充電インフラビジネス最前線】

低圧契約で高圧インフラ整備:急速充電器設置の最大のネックを解決するパワーエックス【特集 EV充電インフラビジネス最前線】
  • 低圧契約で高圧インフラ整備:急速充電器設置の最大のネックを解決するパワーエックス【特集 EV充電インフラビジネス最前線】

グローバルでは800V、1000VとEV充電の趨勢は高圧化に向かっている。一般論として同じ電力量なら電圧が高いほど電流容量を下げられ、設備の小型化や発熱対策で有利だからだ。

だが、DC急速充電器設置の最大ともいえる課題は、400V以上の高圧設備をいかに安く設置するかかもしれない。

この課題へのひとつのソリューションを提案しているのがパワーエックスだ。エネルギーストレージ(蓄電池)を併設することで、低圧電力契約のまま400V、800Vといった高圧のDC急速充電器の設置を可能にする。CPOや設置事業者にすれば、キュービクルの設置や保安要員の確保などが不要になり、充電ビジネスへの参入がしやすくなる。

11月22日に開催予定のオンラインセミナー「EV充電インフラビジネス最前線~5社の取組み~」では、パワーエックス EVチャージステーション事業部部長の森居紘平氏が登壇する。事業の特徴とともに、その狙いや戦略を聞いた。

――パワーエックスは電気運搬船のような新しいエネルギー事業者のイメージがあります。そもそも、エネルギービジネス、EV充電インフラビジネスに参入したきっかけ、理由はなんでしょうか。

ひとつはサスティナビリティです。もともとは、CEOである伊藤正裕がメンタービジネスとしてスタートしました。伊藤がエネルギーに関心を持った理由は、ZOZOのCOO時代、ファストファッションの大量消費に対する疑問を感じたと述べています。

日本のエネルギー変革を考えたとき、再エネの議論は各所でなされていましたが、再エネ活用は蓄電(池)がないと完結しません。いまでこそ価格は下がってきましたが、当時は価格がネックで電池の議論までは起こりませんでした。しかし、ビジネスの課題は同時にチャンスでもあります。この課題にソリューションを提供できれば議論も市場も立ち上がると考えています。

――電気運搬船もその一貫でしょうか。

日本の場合、太陽光発電は用地確保などの問題で大規模な発電所がつくりにくいですが、洋上風力発電は、2030年までに現在の原子力発電のコストと同等になるとみられています。可能性は高いとみています。そのとき発電した電気をどう運ぶか。電気運搬船は送電線以外で電気を送る方法として研究しています。

――今回はEV充電インフラビジネスというテーマでおもにCPO(充電ステーションなどを事業とするオペレータ)にお話をいただくわけですが、パワーエックスはバッテリーからエネルギーソリューションまで幅広く事業を手掛けていますね。

はい。CPOとしてPowerXの充電器が注目されていますが、充電器メーカーとしてもサービスや製品を持っています。さらにバッテリーも国内工場で生産していますし、アプリやサービスも内製しています。再エネ活用というミッションにおいて、発電から供給までハード・ソフトともにカバーする戦略で、再エネエコシステムを担っているところが特徴です。

エネルギーの上流から下流までカバーしている事業者は少ないと思います。

――CPOとして、直営の充電ステーションも立ち上げたようですが、戦略はどうなっていますか。


《中尾真二》

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