【ホンダ CL250 試乗】リバイバルで人気沸騰!新生「CL」を楽しく走らせる秘訣とは…西村直人

ホンダ CL250
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ファッションのブームは一定周期で繰り返すというが、二輪車の世界でもそれは同じ。見た目だけでなく、エンジン形式やタイヤのトレッドパターン、マフラー形状やカラーリングに至るまで当時を思い起こさせるモデルが時折、登場する。

今回試乗したホンダ『CL250』のルーツは1962年に登場した『ドリームCL72スクランブラー』(1968年には『ドリームCL250』が新規で登場)。その後、間をあけて1997年には『CL50』(道路運送車両法における原付1種)、1998年には『CL400』(同、小型二輪)がそれぞれ「CL」の名を冠してリバイバルした。

ホンダ CL250ホンダ CL250

翻って最新モデルのCL250。兄貴分に『CL500』の設定がある。単気筒249cc、24ps/23NmのCL250に対して、CL500は直列(並列)2気筒471cc、46ps/43Nmを発揮する。価格はCL250が62万1500円、CL500が86万3500円とその差は24万2000円。

ホンダの人気250ccクラスにはアメリカンスタイルの『レブル250』(61万0500円)がある。同じ単気筒で兄貴分に500cc(レブルには1100ccもあるからいずれCL1100?)版があるから、てっきりパワートレーンをレブルから移植したのかと思ったら、CL250のエンジンは別型式(基本設計は同一)。よって出力/トルクの発生特性は異なりCL250が、より低回転域でそれぞれの最大値を発揮する。

具体的には、アドベンチャーモデルのホンダ『CRF250L』のエンジンカムシャフトを採用して中回転域までを力強くし、駆動側のスプロケットの歯車をレブル250の36T→37Tへと大きくしてCL250では駆動力そのものを高めた。出力特性を表したグラフで確認すると、CL250はレブル250に対して15~70km/hあたりまでの領域で駆動出力が若干大きくなっている。

◆シート高790mmとは思えない足つき性の良さ

ホンダ CL250ホンダ CL250

こんな事前情報を得てからCL250を前にする。250ccクラスにしては立派なサイズ。スクランブラーの系譜を示す深溝タイプの前後タイヤに、車体後方へとせり上がっているアップマフラーと存在感にあふれる。

サイドスタンドを外して跨がる。車両重量172kgだがハンドル位置が高めなのでスッと起こせた。シート高は790mmと数値こそ若干高めだが、単気筒らしく車体の突起物は少ない。気になったのは左ステップと足の干渉。ステップの前後、どちらに足を降ろす際もスネやふくらはぎ部分にわずかながらステップが干渉する。ただし、足つきそのものはとてもいい。

「アップライトなライディングポジションと安定したニーグリップ性能、さらにはゆとりある165mmの最低地上高を実現しつつ、スリム化したシートを採用し足つき性を高めています」と語るのはCL250の開発を担当された小数賀巧さん(本田技研工業 二輪・パワープロダクツ事業本部)。

それにしてもシート高が790mmもあるとは思えない足つき性の良さがある。身長170cm/67kgの筆者では両足の足裏半分がべたりと接地する。片足なら余裕で膝も曲がるくらいだから坂道でも怖くない。さらに、アップライトな乗車姿勢と相まって、駐輪場から跨がったまま後退することも難なく行えた。

ホンダ CL250ホンダ CL250

「前後タイヤのホイールストローク量を前150mm、後145mmとそれぞれ長くとっていますが、乗り込んだ際の沈み込み量が大き目です。これも足つき性の良さを生んでいるのだと思います」(同)という。

ピッタリと身体にフィットする誂えたジーンズのようにライダーとの一体感が高い。デザイン上のアクセントになっているタンクパッドもニーグリップをより確かなものにする。気をよくしてエンジンをスタートさせると、歯切れの良い排気音がフルフェイスのヘルメット越しに届く。2つの排気口をもつアップマフラーは兄貴分のCL500と同形状だ。規制値を余裕をもってクリアしながら、“パ、パ、パ、パ、パッ”と乾いた単気筒サウンドを楽しませる。

その昔、ホンダのロードスポーツモデルに『ホーネット』(250cc、600cc、900cc)があったが、こちらの3兄弟もアップタイプのマフラーだった。排気口がライダーに近いので生音が耳に届きやすい。聴けば小数賀さん、ホーネットがかつての愛車だったようだ。

◆「あれ、思ったほど力がない?」

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立派な体躯にフィットするライディングポジション、そして高揚するサウンドが揃ったところで試乗を開始する。アシスト&スリッパークラッチ機構がついた軽い握りのクラッチレバーをじんわりリリースして、ゆっくりスタート。「あれ、思ったほど力がないかな……」。この印象は初めてレブル250に乗った時よりも大きかった。

もっとも単気筒250ccに車両重量172kgだ。各所にゆとりあるCL250を前に、それに違わぬ力強さがあるのではと勝手に期待し過ぎていたようだ。気を取り直してアクセルをグイッと大きく捻ってみる。

ズババババッと、幾分図太くなった排気音とともに、気持ちの良い加速を披露した。1速では35km/hあたりが実質的な回転上限。スッと2速~6速へシフトアップして50km/hあたりで流してみる。ここでは大径タイヤ(前19インチ、後17インチ)の確かなジャイロ効果による高い直進安定性を実感した。

ホンダ CL250ホンダ CL250

車体を構成するフレームは前半部分がレブルと共通で、後半部分のシートレールをCL250/CL500専用に設計した。さらにシートレール後端をループ状にし、フレームを肉厚化することで高い剛性を生み出したという。

そのシートフレーム、まさか1本のフレームを曲げたわけじゃないだろうが、どこを探しても継ぎ目が見えない。そこでシートを外してみると覆い被さっていたところに継ぎ目があった。「専用設計なので見た目にもトコトンこだわりました」と小数賀さんはニンマリ顔。

◆景気よくワイドオープンにするのが楽しむ秘訣

高速道路に入る。2速上限80km/h弱、3速上限手前で約100km/hと威勢のいいエンジンをぶん回して走ると相応に走る。パワーの余裕は少ないけれど気持ちよさはトップエンドまで続く。音もいい! この単気筒、景気よくワイドオープンにするのが楽しむ秘訣のようだ。

タコメーターがないので試乗後に開発スタッフに伺うと「6速100km/hで7000回転弱」だそうだ。単気筒となれば振動が気になるが80km/hでは振動が驚くほど少ない。ミラー、ハンドル、ステップと2気筒エンジンみたいに滑らかだ。100km/hだと一転、ミラーやハンドルへの振動がグッと大きくなる。

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速度とギヤ段をいろいろ組み合わせ試した結果、高速道路では6速80km/hがものすごく快適であることが判明した。これだと燃費数値も良好で車載の燃費計ではコンスタントに38.0km/リットル以上を表示する。時間はかかるが、80→100km/hへの加速も6速のままイケる。

ネイキッドスタイルで風防の類いは一切ないけれど(社外アクセサリーとして用意アリ!)、ライダーズジャケットにライダーズパンツと正装していれば不思議と100km/hでも風圧は気にならない。アップライトながらとてもよく考えられたポジションだと感心しきり。

速度を上げても直進安定性は高いまま。路面の継ぎ目や凹みを通過してみても19インチタイヤによるジャイロ効果と高剛性フレーム&シートレールのおかげでひた走る。

◆後輪ブレーキは秀逸!コントロール性の高さが光る

ホンダ CL250ホンダ CL250

長目にとられた前後のホイールストローク量を活かした乗り味も気に入った。路面からの細かな入力にはスッと足を動かしていなし、大きく強い入力には一転してがっしり受け止め一度で収束。これに前述の高い直進安定性が組み合わされるので、一クラス上のバイクに乗っているかのような安心感を抱いた。

改めて一般道路でカーブをこなす。ここではコントロール性の高いブレーキ性能が光った。前輪が直径310mmのシングルフローティングディスクで2ポッドキャリパー、後輪が直径240mmのシングルディスクで1ポッドキャリパー。前後2チャンネルのABSを備えている。

秀逸なのは後輪ブレーキ。作動時に適度な車体の沈み込みを伴うサスジオメトリーと、制動コントロール性がピタリと合っているから、カーブ走行時にあてがう緩い後輪ブレーキとスロットルオンとの連携がスムースに行える。また、曲率を問わず連携度合いは一定だからUターンも臆することなく行えた。この特性と最小回転半径2.6mを強みにすれば、旅先で見つけた小路にも気兼ねなく入っていける。

◆純正アクセの「フラットシート」のマッチングに驚く

ホンダ CL250 の純正アクセサリーとして用意されるフラットシートホンダ CL250 の純正アクセサリーとして用意されるフラットシート

CL250、早くも人気沸騰とのこと。純正/社外問わずホンダのWebサイトにはCL250向けのアクセサリーがたくさん紹介されている。このうち、是非とも試して頂きたいのは、純正アクセサリーの「フラットシート」(1万2540円)だ。

いわゆるローダウンシートではなく平坦な表皮で覆ったシート形状なので若干ながら肉厚も増える。が、これがすばらしい出来映え。付け替えて走ってみたが、純正シート装着時に気になっていた降ろした足とステップとの干渉がほぼ解消。足をつく位置の自由度が格段に高まった。

さらに、重心(ライダー乗車)位置が少しだけ上がったことでリーン特性にも好影響が生まれた。リーン初期にほんのわずか、その必要性を感じていた大径タイヤ装着車が求める“よいしょ”という体重移動が要らなくなった。曲がりたい方向に頭ごと向けた身体全体の動きにスッと車体がついてくる。「標準装着でもいいのでは……」と思えるほど高いマッチング度合いだ。

締めくくりは燃費数値。時にエンジンをぶん回しながら走らせた80km/h強での値は33.6km/リットル(WLTC値は34.9km/リットル)。次回は兄貴分であるCL500との比較試乗を行なってみたい。

ホンダ CL250と西村直人氏ホンダ CL250と西村直人氏

西村直人|交通コメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

《西村直人@NAC》

西村直人@NAC

クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

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