先日、春先より欧州で投入するニューモデルとして、新しい『DS 4』をオンラインで発表したフランスのDS。発表会の直後に、DSブランドを指揮するベアトリス・フシェCEOにインタビューする機会を得た。
独立ブランドとしてDS 4を再構築…特筆すべき特徴は3点
DS 4
初代DS 4は、まだシトロエンDSの時代に開発され、マイナーチェンジでDS 4クロスバック、つまりSVUクロスオーバーが加わった。一方で新しいDS 4はコンセプトから開発、ローンチに至るまで、すべて独立ブランドとなったDSの中で進められた。Cセグメント・プレミアムの状況も当時とはかなり異なる今日、DS 4はどのように練られたのだろう?
「確かにDS 4は100%、DSとして構想し、開発しています。つまりDSブランドの価値観や守るべきレベルに対し、妥協なくコンセプトが練られたということです。Cセグメント・プレミアムは非常に伝統的で保守的なセグメントのひとつで、DSは従来なかったプロダクトを投入します。従来のCセグのプレミアム・ハッチバックもしくはクーペSUVの顧客で、『アエロ・スポーツ・ラウンジ』というコンセプトで示したようなダイナミックなシルエットを好む層にアプローチすることを狙っています」
DS アエロ・スポーツ・ラウンジ
エンジニアリング面ではEMP2プラットフォームを根本的に見直すことで、結果的にコンポーネントの70%が新しくなり、それゆえにDS 4はセグメント随一となる特徴を3点、獲得できたと考えているという。
「ひとつ目はデザインのカリスマ性。力強さとエフィシェンシーを両立させています。これを支えるのは720mmの大径タイヤの採用。ボディとタイヤの比率という点で見たことのないプロポーションに仕上がっています。ふたつ目は、アール・ドゥ・ヴォワイヤージュ(旅するための技法)、ピュアで流麗なインテリアですね。例えば中央のエアコン吹出口が見えない仕組みで、高級感のある高貴な素材を、より広い面積にわたって用いることができました。もうひとつはドライビング・エクスペリエンスです。ヘッドアップディスプレイはドライバーの視界前方に、21インチ画面相当の広さで投影されます」
ミドルレンジモデルのDS 4に要求される“DSらしさ”
左からDS 9、DS 7クロスバック、DS 3クロスバック
ラインナップ内を見渡せば、やがて日本に上陸するであろうサルーンの『DS 9』、『DS 7クロスバック』を上位に控え、『DS 3クロスバック』よりひと回り大きいDS 4は、ミドルレンジ・モデルといえる。基本的な仕様はどのように定められたのか?
「このセグメントのカスタマーはスタイルとテクノロジーに対する関心と要求が高いので、DS 4はDSとしてのアイデンティティを強調する必要がありました。つまりフランス流のサヴォワール・フェール(モノ造り文化)の洗練と、最新テクノロジーを調和させることです。我々としてもDS 4の開発要件の実現には、高い目標を掲げて妥協しませんでした。」
DS 4
「例えばDS 4のインテリアは、まさしく旅へ誘うものになっています。ひとつひとつの要素が機能的にもスタイル的にも直観的に統合された、デジタルで流麗でエルゴノミックなインテリアを、DS 4は提案しています。この(見た目にも使い勝手の上でも)流麗さは、ダッシュボード上から見えなくなったエアコンのベンチレーターやDSスマートタッチといった、イノベーションによってもたらされています。
またこの流麗さは、レザーやクルー・ド・パリ装飾、鍛造カーボン、ウッドや、高貴な素材を新しい仕上げ技術によって、広い面積にわたって用いることでも実現されています。包み込むように快適なシートは、高密度の発泡素材で、ベンチレーターやマッサージ機能も備えられます。
さらにDS 4は690W出力で14個のスピーカーによるフォーカル・エレクトラのオーディオ・システムを提案するだけでなく、前面に加え前席と後席の左右ウィンドウにも、アコースティックガラスを組み合わせています。Cセグメントでは初の試みでしょう。こと走りに関しても、DS 4はDSアクティブスキャンサスペンションによって、セグメント随一のロードホールディングを提供します。ご存知のように、フロントウインドウに備わるカメラによって路面の状態を予測し、サスペンションを予測制御し、Cセグメントでは他に例を見ない機構です」
PHEVこそが解…Cセグメント・プレミアムに求められる汎用性
DS 4
単純に、上位機種にあった最新機能を受け継いで、下位機種以上のコンフォートを与えた訳ではなく、ひとつひとつの機能や特徴が密接に絡まり合い、DS 4独自の効果や世界観を生み出していることを、フシェ氏は強調する。ちなみに少し前に発表されたシトロエンの新型『C4』は、ë-C4という100%のBEV版をむしろ強調していたが、なぜDS 4の電動化モデルは今のところPHEVのみなのだろう?
「DS 4では、使い勝手において制限や妥協のまったくない”ニュー・エネルギー”プロダクトを展開すること、それが我々の目指したところでした。E-TENSEプラグイン・ハイブリッドというテクノロジーは、内燃機関と電気それぞれの最良の部分を調和させることができます。総出力225psがもたらす動的性能と、日常的な走行範囲をゼロエミッションでこなせる50km以上の航続距離です。それでいて、充電やトランク容量を一切心配せずに、長距離をこなせるキャパシティがあるのです」
DS 4
概してDセグ以上の上位セグメントほど長距離志向でもなく、Bセグほど街乗り用途でもないながら、一家に一台のユーザーにとってはよりポリヴァレント(注、状況を選ばず有用性や価値が高いこと)な選択肢となるCセグメント・プレミアムにおいて、今後、PHEVやBEVといったリチャージャブル・ヴィークルの普及やシェア拡大を、どのように見ているだろうか。
「まさに先ほど申し上げたように、Cセグメント・プレミアムではポリヴァレンスとドライビング・プレジャーが基本的な価値観。それらを両立させるソリューションとしての、E-TENSEプラグイン・ハイブリッドという訳です。昨年2020年11月段階での数値ですが、DSは販売台数の30%が電動化モデルとなっていまして、全体のCO2 排出平均値は82.6g/kmと、欧州市場でもっともエフィシェンシーの高いプレミアム・ブランドになっています。ですのでDS 4の投入によって、この電動化戦略はさらに補強されると確信しています」