「空飛ぶクルマ」型式認証や大阪万博、社会実装はどうなる?…キーパーソンたちが語る現在地と可能性

AirXが日本での運行に活用予定の『EHang 216』(国際ドローン展)
  • AirXが日本での運行に活用予定の『EHang 216』(国際ドローン展)
  • AirXによる沖縄県伊平屋島での試験飛行(2023年6月)
  • VoloCity(パリ航空ショー2023)
  • Wisk Aero
  • Vertical Aerospace
  • Lift HEXAが日本で初めての有人実証飛行を実施(2023年3月大阪城公園)
  • SKYDRIVE
  • 「空飛ぶクルマ」トークセッションの登壇者。左から丸紅 航空宇宙・防衛事業部 航空第三課長 吉川祐一氏、ANAホールディングス 未来創造室 モビリティ事業創造部 エアモビリティ事業グループリーダー 保理江裕己氏、日本航空 エアモビリティ創造部 マネージャー 佐々木康人氏、JDC会長を務める野波健蔵氏、SkyDrive CSO(最高戦略責任者) 村井宏行氏、AirX 代表取締役CEO 手塚究氏

日本ドローンコンソーシアム(JDC)は、東京ビッグサイトで7月末に開催された国際ドローン展において、「空飛ぶクルマ展示会&トークセッション」を開催した。「空飛ぶクルマ」で日本を代表する関係者が、社会実装へ向けて話し合った。

トークセッションに参加したのは、 AirX 代表取締役CEO 手塚究氏、ANAホールディングス 未来創造室 モビリティ事業創造部 エアモビリティ事業グループリーダー 保理江裕己氏、日本航空 エアモビリティ創造部 マネージャー 佐々木康人氏、丸紅 航空宇宙・防衛事業部 航空第三課長 吉川祐一氏、SkyDrive CSO(最高戦略責任者) 村井宏行氏の5名。モデレーターはJDC会長を務める野波健蔵氏が努めた。主催者によれば「空飛ぶクルマ」で日本を代表する関係者が一堂に集まるのは日本初のことになるという。

トークセッションでは、2025年に開催される大阪・関西万博において目玉企画となる空飛ぶクルマの準備状況を中心に、運行するために最も重要な型式認証・機体認証の準備状況や社会実装へ向けた課題などについて話し合った。

「空飛ぶクルマ」トークセッションの登壇者。左から丸紅 航空宇宙・防衛事業部 航空第三課長 吉川祐一氏、ANAホールディングス 未来創造室 モビリティ事業創造部 エアモビリティ事業グループリーダー 保理江裕己氏、日本航空 エアモビリティ創造部 マネージャー 佐々木康人氏、JDC会長を務める野波健蔵氏、SkyDrive CSO(最高戦略責任者)村井宏行氏、AirX 代表取締役CEO 手塚究氏

◆“空飛ぶクルマ”を取り巻く概況について

各社の取り組み状況を紹介する前に、まずJDC会長の野波氏が空飛ぶクルマを取り巻く概況について解説した。

野波氏が最初に言及したのは“空飛ぶクルマ”の呼称について。野波氏によれば、この呼称を使っているのは日本だけで、他の国では「eVTOL(垂直離着陸機)」「AAM(Advanced Air Mobility)」 「Urban Air Mobility」と呼ぶのが一般的になっているという。国際機関であるISOでも「AAM」で統一されることが検討されていると説明する。

また、野波氏は「そもそもこの発想はウーバーテクノロジーが7~8年前に構想を打ち立てたもの」と述べ、それはワンボックスカーで移動できる人数(6~7人)を想定していたようだ。しかし、ウーバー自身は3年後にこの事業から撤退してしまった。ただ、「その後の開発状況を見ると、開発中とされる空飛ぶクルマ41機は、4名以上が約半数。他は3名以下となっており、基本的にウーバーが提唱したスタイルでエアモビリティサービスが考えられている」と説明した。

ただ、「現状で実用化できている会社は1社もない」と語り、そんな中で日本は2025年開催の大阪万博の目玉企画の一つとして照準を合わせている。日本経済新聞によれば、会場の夢洲と周辺の空港や大阪市内を結ぶ8路線、1時間に20便が運行予定されるという。野波氏は「これがホントなら、ここまで大規模な運航は世界初ではないか」と評した。

一方、動力系はすべてバッテリー(8割)かハイブリッド(2割)。また、高効率で飛行できる有翼機が58.5%という状況にある。野波氏はこれについて、「空飛ぶクルマにもこの発想はあるものの、近距離を飛行するにはマルチコプターの方が効率がいい。それは離発着が狭い場所でも正確にできることが理由」とする。

スペックとしては、「ウーバーが目標とした速度240~320km/h、1回の充電で60マイル(96km)が標準となりつつある」とし、そうした中で「現在開発されているものの仕様を平均すると、『固定翼なしの2人乗りで最高速度150km/h、飛行距離84.3km』と、『固定翼ありの4人乗りで最高速度300km/h、飛行距離281.4km』で2分されている」状況にあるという。このことから、「固定翼なしは近距離を結ぶエアータクシー的な用途で使われそうだ」とした。

2023年5月時点で開発を公表しているメーカーは世界51社。その内訳は、米国17社、イギリス、ドイツ、中国、日本が各4社(teTra aviation、SkyDrive、HONDA、Skylink Technologies)、イスラエル3社、フランス、オーストラリアが各2社となる。熾烈な開発競争下にあり、法整備の観点から米連邦航空局(FAA)、欧州連合航空安全局(EASA)がその進化を牽引している。

野波氏によると「現在、実証実験レベルで飛ばしているのは世界で18社。米国9、独2、英、仏、スウェーデン、チェコ各1で、残念ながらここに日本はいない」とし、すべて電動またはハイブリッドで、62%がVTOL型有翼機、38%無翼機で飛ばしているという。空飛ぶクルマの用途として野波氏は、「様々なプランが出ているが、日本は何と言っても災害大国。そうした場面で空飛ぶクルマの活躍を期待したい」と述べた。


《会田肇》

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